批判的思考についてもう少し

批判的思考が「相手の意見を否定的に見ることができる思考」と捉えている方があまりに多いので,もう一度記事にしたいと思います。

よく見られるのがこんなケース
Aくん「答えは○○です。理由は△△だからです」
Bくん「その理由は少し違うと思う。だって,□□のこともあるんだから。」
こんなやり取りは,確かにBくんは他の場合を想定し「判断」することで意見を言っているので,
確かに批判的思考が働いていると言ってもよさそうです。
しかし,この事象を見たときに,
「A君の意見をそのまま聞くのではなく,違うかもしれないと『批判的に』聞いている」と捉えて,
それをもって批判的思考と捉えてているとしたら(文頭のように感じていたら),少しズレていると言わざるを得ません。


 

もう一つ例を挙げます。回答者を小学6年生として,問題を出したとします。
「小学6年生のCさんは学校でいつも先生に怒られています。それは,授業中に先生の話を聞いていないからです。あなたはCさんにどんな声をかけますか?」という問題に対して,

一般的な子供の反応だと
「先生のお話しは聞かなくてはいけないから,聞くように注意する。」
「近くの席だったら,様子を見てあげる。」
「Aさんを先生の近くの席にする。」などでしょうか。

これが批判的思考をもった子供の反応だと,いきなり結論を急ぐのではなく
「Cさんには何か理由があって聞けないのかもしれない」
「どうして話が聞けないかをCさんに聞いてみたらいいよ」
「Cさんは昔から話を聞けなかったのかな」
「教室の他の友達はどんな様子なんだろう」などの判断材料を得ようという反応になります。

多様な情報をもとに,自分で考えて「判断」することが批判的思考ですから,
多面的に捉える中で,肯定的(好意的)に捉えることもあるでしょう。
そちらのイメージを持たれている方はまだ少ないようです。
比較的わかりやすい説明として,「本当にそうなのか考えることができる思考」と捉えている人もいますね。これを促すために教師は,子供の発表を安易に評価(「そうだね!」「違うんじゃない?」など)するのではなく,「本当にそう?」や「○○さんの発表を聞いて△△さんはどう思うかな」等の促しをするのがいいとされています。
これまでの良い授業ではよく見かけられた声がけですが,子供の思考を促す手立てとしても効果が高そうです。


余談ではありますが,批判的思考をするかしないかはその人の性格にも相関関係が強いと思います。
批判的思考が強すぎて慎重になるのか,慎重な人が批判的思考を身に付けるのか,因果関係はどちらにあるかはわかりません。ただ,バランスのとれた批判的思考力は,教師が目の前にいる子供に見せるべき教師(大人)の能力の一つと言えると思います。


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