平成29年度オススメ! 校内研究仮説の例

4月に入って,ずいぶんアクセス数が伸びました。
おそらくは,「今年の研究についてどうしたものか」とお考えの研究担当者さんも来てくれているのではないかと思います。
私自身も,今年の研究仮説(テーマ)をどのようにしたものか考えているところですので,少しでも役に立つものがあればと思い,エントリーを立てました。

今の教育動向を考えると,新学習指導要領が発表されて,それを「どのように体現していくか」という視点は外せないことでしょう。そうなると,どこに焦点化をかけて研究を進めるかということになると思います。そこで,以下の内容について紹介します。

 

  1. 主体的・対話的で深い学びを実現するカリキュラム・マネジメントの在り方

○ 基本となる考え方

  • カリキュラム・マネジメントの充実のため,教科横断的なつながりを意識した授業作りや,人的・物的な教育環境の充実を基に,それぞれの授業を構成していく。

☆ 研究の進め方(例)

① 単元配列表の作成 ② AL的授業の洗い出し ③ 関連の書き出し ・・・

参考書籍 「カリキュラム・マネジメント入門」田村学

山野のコメント

平成29年度の研究テーマとしては定番です。ただ,授業研究というよりは,カリキュラム作りが中心となるため,教務色が強くなるのが難点です。同時に,15年程前に流行った学校別学習指導計画(単元配列表)との違いを,明確に打ち出すための方向性も必要となり,授業に反映されるものは苦労に見合ったものになるかは疑問です。
各自治体の方向性としては,ここ(カリマネ)を強く押してくると思われますので,それには対応した研究になりそうです。

 

  1. 誰でも,もっと主体的・対話的で深い学びを実現する授業の展開

○ 基本となる考え方

  • 本校における「アクティブ・ラーニング」について,どの学校のどの先生でもできるように,支援の在り方にスポットを当てて,授業作りについて深める。

☆ 研究の進め方(例)

① これまで行っていたALのための支援の整理 ② 発達段階ごとに整理

③ 資質・能力とのつながりを教科の目標と照らし合わせて示す ・・・

参考書籍「クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門」西川 純

山野コメント

研究テーマをALで行こうと決め打ちしたものの,実際の授業でどのように進めるかの基本となる「学びの保障」についてどう考えるかを教えてくれます。一方で「(単位時間における)ALなんてもうやっているよ」と思っている人からすると,資質・能力とのつながりや,発達段階ごとのかかわりなどとの関連を校内研究で結び付けていくというのは,いい研修になるのではないでしょうか。研究初心者や研究が停滞気味の先生が多い学校向けのテーマです。

 

  1. 資質・能力,「アクティブ・ラーニング」,ICTから見る,初等教育におけるカリキュラムの在り方

○ 基本となる考え方

  • ALとICTについて,具体的な授業を提示しながら,その関連をカリキュラムとして位置づけ,資質・能力の育成に必要なカリキュラムについて考える。

☆ 研究の進め方(例)

① 単元配列表の作成 ② AL的・ICT活用の授業の洗い出し ③ 資質・能力(教科等の目標)との関連性の確認 ・・・

参考書籍 「ICT教育100の実践・実例集―デジカメ・パソコン・大型テレビ・電子黒板などを使った、今すぐ始められらるICT教育」

山野のコメント

1.の研究テーマを具体化したもの。これまでにICTやALについて研究していた学校では取り組みやすいテーマだと思います。特にICTとALのかかわりについては,カリキュラムの中で示していくのも一つの方法だと思います。山野的には,単元配列表の上に,3枚のクリアシートにそれぞれ「資質・能力」「AL」「ICT」のファイルを重ねられるようなものを作るのがゴールイメージでした。

 

  1. カリキュラム・マネジメントのための,さらなる主体的・対話的で深い学びを目指して

○ 基本となる考え方

  • 「アクティブ・ラーニング」の授業をさらに深化させ,その価値について迫る。その授業について,カリキュラム・マネジメントの視点でも基礎となる,重視するべき内容であることを示し,広めていく。

☆ 研究の進め方(例)

① 教科の目標に整合する学びの文脈の整理 ② AL的要素について精査・共有化 ③ カリキュラムとのつながりについて示す ・・・

参考書籍 「アクティブ・ラーニング」を考える 教育課程研究所


山野コメント

AL研究を1年以上やっていて,さらに授業実践レベルでの向上を目指すのであればこのテーマがいいと思います。AL的授業の具現化や資質・能力との関連,発達段階での捉えや,「深い学び」とは何かなど,これまでの実践に合わせ,研究テーマを絞りながら進めることができると思います。実践が中心になるので,1.よりは研究らしい研究(?)が進めやすいはずです。

今回は「深い学び」についてはテーマに入れませんでした。そこを焦点化するならば,「探求的な学び」とセットにするのが望ましいと思います。「深い学び」は「探求的な学び」の課程で副産物的に生まれてくるもので,それ自体を目的にすると最終的には「教科等の目標の達成のための授業」となり,それを実現するための具体的な方法が何なのかを改めて示す必要が出てくるからです。

つまり,「○○と△△に基づいた,『深い学び』の実現する授業の在り方」といった言い回しになるくらいなら,「探求的な学びで実現する『深い学び』の授業」としておいて,副題でそれについて説明した方が,範囲も広く,研究もしやすいのではないかと思います。

もちろん学校の実態や自治他の意向もあるでしょうから,それぞれになるのは仕方ない「研究仮説(テーマ)」ですが,いろいろなテーマと比較することで,見えてくる研究像もあると思います。各学校での研修がより深まるものになる,一つの助けになったらうれしいです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です