協同と協働

似た言葉には,「協同学習」「協働学習」「協調学習」があります。それらの違いについては,正直はっきりしておらず,誰も根拠をもって明確に示していません。というよりも,現状できないでしょう。教科調査官や視学官の先生,国立教育研究所の方やアクティブラーニングの提唱者である溝上先生をもってしても,その辺ははっきりとした言及を避けています。それっぽく話している人も何人か見かけますが,それはあくまで持論(自論)の展開であって,明確な線引きには成り得ないと言えます。

さて,上の3つの学習は目指しているものも似ています。使われている分野が違うだけで,非常に極端に言ってしまえば「提唱している人が違う」というレベルではないかと個人的には捉えています。「誰かの提唱にそのまま乗っかる」というのは公的機関である文部科学省は慎重ですから,あくまで勘繰りの域を出ませんが「学会まである『協同学習』と少し距離を取った」ぐらいの感覚ではないでしょうか。このへんは「アクティブラーニングとアクティブ・ラーニング」の時と同じですね。

私自身もいろいろな資料を探しましたが,現行で学校現場で行われている「学び合い」等を生かした学習方法で考えるならば,上記の3つの中では「協同学習」がALの取組に近いと私は考えています。

ただし公的な言葉として,最近の文部科学省が使っているのは「協働」ですから,ALの研究として使う言葉に限定するならば,「協働」を用いるのが無難でしょう。
「これまでの自分たちの研究でやっていた『協同』と変わらないから『協同』を使う」というのもわかりますが,その場合必ずと言っていいほど,「文部科学省の言っているものとは何が違うの?」「協働とはどう違いを見出しているの?」といった質問があるでしょうから,その答えは用意しておいた方が良いでしょうね。
ちなみに私は「『協同』は,『協働』を含んでいると捉えて結構です。」と答えるようにしています。もうちょっとだけ詳しく言うと,「『協同』は学習者の身の回りの人と,『協働』に行くほど地域や専門家など普段のかかわりが薄い人と,課題解決に向けて取り組む」というイメージでいます。初等教育で「協同」で学び,将来の「協働」で学ぶ基礎をつくるような感じです。
この辺りは,溝上先生の「親密圏」「公共圏」を参考にしています。

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資料「トランジションを見据えた高校・大学教育改革」より 2014年9月26日


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