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“最近”のGIGAスクール実施に向けた課題③

さて、今年度も1か月が経とうとしていて、GIGAスクール関係のトラブルを目にしていると、「使っている人のトラブル」はシステム的なものが多くて、別な知っている人が助けてくれて解決しているケースが多いなぁという実感です。実は本当のトラブル(問題)は、声を出せないでいる人たちにあるのかもしれないと思っている今日この頃。

(10)持ち帰りの可・不可の判断基準

まずは、先行実践を参考にしましょう。そのものズバリの「PC持ち帰り学習の手引き(低学年用)」(つくば市先進的ICT教育)。高学年用はもちろん、授業実践もたくさん載っています。

他にも、市町村レベルでこのような手引を作成しているものがあるので、みんなで一度目を通してから、持ち帰りの可・不可の話し合いをすればいいと思います。基本的には(低学年を含めても)「持ち帰り」、又は「持ち帰るための方法」について積極的に話し合うのがよいと思います。

自治体によっては、低学年は iPad で中学年以上は surface なんてところもあるようで、実質的運用に向けて、仮運用として上学年のみ持ち帰り、なんて方法もありかもしれません。

より高いレベルで、全国で一律の学習環境を整えるためには、「持ち帰らない」がゴールになることはありえないと思います。そう考えると、「不可にする基準」は、将来的な全面持ち帰り体制になるまでの猶予期間、ぐらいしか思いつきません。

低学年だと破損の心配が~、とか、端末が重いから~、とかも含めて、それを解決する方法が準備できるまでだと覚悟するのが自然でしょう。市町村経費でカバーを買うとか、毎日持ち帰る必要度が低い教科書等(地図帳、図工、音楽、道徳…)の「置き勉」制度を整えるとか、学校や児童の実態を踏まえて「端末を持ち帰る」前提で考えることが、必要でしょう。

“最近”のGIGAスクール実施に向けた課題②

GIGAスクール構想の実現に向けた課題、ということでよく挙げられる課題を見ていると、
「う~ん」と唸ってしまう、困ってしまうものが多いなぁというのが実感です。
(本当はちょっと怒ってしまっています)


(7) 教育困難校では意味が無い

逆です。できることを探して、意味を見つけるんです。

昨年5月頃の、「貧困家庭でWi-Fi対応がでいないから全家庭でやらない」から、変わってないなぁという印象です。
「やらないリスク」を背負って、結果的に一番の被害者になるのは、その学校に通う子供なのですが…。

この発言の要旨はどれなのでしょうか。
「うちではできない、だから全体もやらないで」なのか、
「うちはこんなに大変な学校なのに、なんで配慮してくれないの?」なのか、
「とにかく私はやりたくない」なのか。

発想を変え、「一般的な方法でやるのはうちは難しいから、独自の導入方法で目的の達成を目指す必要がある」と言える学校・教員でありたいし、あってほしいと思います。

別な方向から言えば、「生徒指導、もっと頑張ろうよ」という話。
自分の実体験から考えても、教育困難校でもできることが必ずあります。
それを見つけるパワーが残ってない、という悲惨な状態の学校もあるかもしれませんが、このようなネガティブ発言をしても、子供の学ぶ機会がなくなるだけです。


(8) 利用制限の程度の基準がほしい

前提として、どの学校にも当てはまる基準はありません。
先行実践から、共通点や相違点を分析的に調べ、自分の学校に合う基準を考えることが大切です。

セキュリティポリシー等は他人事にしておくと、実質性・実効性が失われます。
その労力が惜しいなら、「なぜ利用制限が必要か」を交流するところから始めましょう。
自分事(主体的)になっていなければ、いくら情報があっても解決(深い学び)には結びつきません。


(9) 有効なソフトがわからない

まず自分が、「子供のために、どんなソフトが必要か」を理解していますか?
「これをやれば大丈夫」なモノを求めているだけではありませんか?

「子供がこんな学びの姿になるような、ソフトが欲しい」まで考えていれば、有効な資料は自ずと見つかります。
これとか、
これとか。

どんな教育活動も、「何をするか(コンテンツ)」が先にあるのではなく、
「なぜするか(根拠)」、次に「そのためにどのようにするか(方法)」がないと、子供の姿に結び付きません。
教師の文脈ではなく、子供の文脈で有効なソフトを探しましょう。


(10)持ち帰りの可・不可の判断基準 は次回で。

“最近”のGIGAスクール実施に向けた課題①

GIGAスクール構想の実現に向けた課題と言えば、

(1) 端末が足りない
(2) ネット環境が整わない
(3) 教員のスキルが足りない
(4) 端末の管理が難しい
(5) 市町村で足並みがそろわない

この辺がよくある課題だったわけですが、最近はこの課題もある程度、解消してきているようで、今日は新たな課題の話。

ちなみに(1)~(5)の課題を”今”解消するには、市町村教育委員会が主導の内容は、とにかく急かすor学校単位で先行研究で解決していく・・・ぐらいとしか言えません。結局市町村(学校)の実態に応じて進めるしかない、というのが正直なところでしょう。

話を戻して・・・、新たな課題は例えばこんなもの、
(6) マシンスペックが足りない
(7) 教育困難校では意味が無い
(8) 利用制限の程度の基準がほしい
(9) 有効なソフトがわからない
(10)持ち帰りの可・不可の判断基準

(6)は、確かに一人一台端末の実現のために、マシンスペックを下げて低価格化を実現させたため、スペックがある程度低くなるのは仕方ないかと思います。ただ、GIGAスクール構想で実現を目指す使い方においては、十分なスペックだと思いますので、実際、どんなことをさせたくて「スペックが低い」と言っているのか気になりますね。
自分の家にも数種類、各市町村が導入しているタブレットPC等と同等の端末があり、各学校で行うようなことを想定して動作させていますが、特に問題を感じたことはありません(大人数が同時に動作することに関してのテストはできていませんが・・・)。

この課題に関しては、
①得意な先生が特化して、特別な授業を作り上げようとして高スペックを要求することをしようとしている
②回線速度の問題が原因で上手くいかないことをマシンスペックが原因と勘違いしている
あたりが理由のような気がします。
端末の更新は一朝一夕でできることではないので、「与えられたマシンでできることを考える」と言うしかないと思います。

思ったより長くなりそうなので、続きは次回で。

学習指導要領の目的について

資質・能力の育成が目的であることは、昨日書いた通りです。

(1) 育成を目指す資質・能力を示し、「目的」を明確にした。

 ①予測困難な時代を拓き、社会の創り手となる子供の育成

 ②学びの主体は子供だということを明確化

さて、今後研究を進める上で気を付けたほうがいいのは、「社会の創り手」という部分。「社会の担い手」という表現はこれまでも聞いてきましたが、あくまで「創り手」。子供が自ら創り出していく、というニュアンスを強く込めたかったことが見て取れます。このことは文字面に現れなくても、研究部からの発信(校内研究でのプリントや発言)や指導案の書き方、最終的には研究のまとめに至るまで、影響があることなので、最初から気にしておいたほうがいいと思います。感覚のズレは、言葉の節々にどうしても出てしまいますからね。

背景にはもちろん学びの主体は子供である、というパラダイムシフトがあるわけです。5年前は ” child center ” (子供が中心)という表現も見られました。(個人的には子供の預かり施設?みたいな響きで、最初からピンと来なかったので、少し安心しています)

子供が中心であることは、令和の日本型学校教育で、「個別最適化された指導」(「個別最適化する」のは教師?大人の望むように学ばせる?)から、「個別最適な学び」へ表現が変わったことや、変わった理由を「『個に応じた指導』を(学習指導要領の趣旨に則り)子供主体の表現に変えただけで大きな方向転換ではない」と言っているあたりに関連しますね。主体が教師から子供にというパラダイムシフトは、すごく大きな方向転換だと思ったりもしますが…。

これまでもALの時から、「授業の主体は子供」「評価は子供の姿で」としていましたが、今回の学習指導要領でまとめたよ、ということなんでしょうね。

今回の学習指導要領のポイント

 

「文部科学省は、『たし算』ばかりでとにかく新しいことばかりさせようとする。」「『働き方改革』を謳うなら『ひき算』を提示してほしい」なんて最近よく聞きますが、そもそも、新しい学習指導要領で何を足そうとしているか、ちゃんと理解している人ってどれくらいいるんでしょうか。

新しく入ってきたことを具体的に挙げるのは次回にして、まずは「(新)学習指導要領のポイント」だけ語っていきますね。だれかに聞かれたら、下の「 」の3つで答えておいて、(1)~(3)で補足。余裕があったら①、②もね。

 

今回の学習指導要領のポイントは?

(1) 育成を目指す資質・能力を示し、「目的」を明確にした。

 ①予測困難な時代を拓き、社会の創り手となる子供の育成

 ②学びの主体は子供だということを明確化

(2) 育成するために必要な「内容」を修正・追加した。

 ①各教科等でバラバラだった各教科等の目的を3つの柱(資質・能力)で整理

 ②追加内容は「プログラミング教育」とか「外国語教育」とか

(3) 育成するための「方法」を提示した。

 ①「主体的・対話的で深い学び」の実現(に向けた授業改善)

 

(1)~(3)を図で表したのがコレ。

学習指導要領改訂の方向性 よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現 各学校における「カリキュラム・マネジメント」の実現 何ができるようになるか 新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実 学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養 生きて働く知識・技能の習得 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成 何を学ぶか 新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し何を学ぶかどのように学ぶかよりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現学習指導要領改訂の方向性何ができるようになるか生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目「公共(仮称)」の新設など各教科等で育む資質・能力を明確化し、目標や内容を構造的に示す学習内容の削減は行わない 高校教育については、些末な事実的知識の暗記が大学入学者選抜で問われることが課題になっており、そうした点を克服するため、重要用語の整理等を含めた高大接続改革等を進める。 どのように学ぶか 主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善 生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成 知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善

この図はよく見るんですけど、字が多すぎて全く理解しようと思えない・・・。わかっている人が見れば、よくまとまった図なんでしょうけどね。

全体的には、前例のないことに挑戦している、「挑戦的な意欲作」と言えます。そして、新しい表現(内容ではない)が多くて、インパクトもあります。ただそれが、人によって「負担」に感じるのも確か。

そのあたりをみんなで共有しつつ、具体的にどう改善していくかについて、今週はだらだら書こうと思っています。

オンラインシンポジウム「令和の日本型学校教育」を語る!」の要点と感想

先日予告していた、オンラインシンポジウム「令和の日本型学校教育」を語る!」(リンクはYouTubeによるアーカイブ配信)についてです。

基本的は、「答申(「令和の日本型学校教育~」)は学習指導要領の考え方を述べたもの」を確認しているような内容でした。その具体について話していたという印象ですね。

少し内容に踏み込むと、 ※( )内は内容を踏まえた解釈

①「主体的・対話的で深い学びの実現」や、コロナ禍の対応で現場は疲弊している、という現状を踏まえ、教育委員会等との協力が不可欠であること。(校内だけでなく、より広い範囲での「協働的」な関係づくり)

②生涯教育の視点でも、ICTを活用しながら、子供の自己肯定感を高めていく取組が必要なこと。(学び続ける大切さを姿で示す教師は、子供にとって一番わかりやすいモデルケース)

③失敗が許されない風土の中でも、探究やチャレンジしながら乗り越えていくことが大切であること。(そのためには、互いの信頼関係の構築が重要)

といったあたりです。繰り返し出てきたワードは、「伴走者」。子供と関わる時の教師の在り方を指す言葉ですが、学びの主体が子供であることを再確認するような言葉だと感じました。

最後に、全体を見た感想です。シンポジウムの中で、中教審に委員もメタ的に発言していましたが、「公的(文部科学省)な発信として、このような(十分な精査が必要な内容をシンポジウムとして交流し、zoomでリアルタイムで流す)発信の仕方は、今まででは考えられない」ということです。内容で言えば、互いの意見が全て同じ方向を向いているわけではなく、表現で言えば、「揺れ」や「甘さ」が随所に見られました。自分はそれを「試行錯誤の中で、失敗を織り込みながら、とにかく進んでいくことの大切さ」を姿勢で示したのだと捉えました。

他の行政側から見れば、「こんな雑に発信していいのか」という感想もあると思います。しかし、最適解を求めて変化(更新)し続けるには、発信の反応を受けて、さらに改善していくというPDCAサイクルの回りを今まで以上に早くしていく必要があり、そのスパンを短くする必要性をアピールするものだったと考えます。

社会の変化に学校だけが取り残されることがないよう、一番子供に近い教師が変化を敏感に感じ取って捉え方を更新(リフレーミング)し、指導を含む行動を変えていく(アップデート)が、ここでも重要だと思いました。

来週は、「GIGAスクール構想本格運営時チェクリスト」について書こうと思っています。

「個別最適な学び」と「協働的な学び」について,現時点の要点整理と今後の予想

・基本は,新学習指導要領。よって,未来の社会の創り手(すべての子供)に必要な資質・能力の育成のための学び。

・GIGAスクール構想との共有キーワードは,「(ICTを用いた)誰一人取り残さない教育」。

・「個別最適化された学習」から「個別最適な学び」へ変わった背景は,学びの主体が子供である(新学習指導要領の内容に合わせた)ことと,学びの対象の変容(予測不能な課題)への個別のアプローチ(個性化)を認める現れ。

・「指導の個別化」と「学習の個性化」は,今後はあまり語られなくなりそう。(例:ALの時の「協同」「協働」「協調」の違いの追究)

 →根拠は、分かりづらさと理解する価値の低さ。特に「指導の個別化」は,分かりづらい。また,「学習の個性化」との線引きが難しいので,あっという間に引っ込めそう。

・「協働的な学び」は,「対話的な学び」との比較の視点から,「主体的・対話的で深い学び」との関連が説明される場面がありそう。(溝上先生資料のp8.9・協働的な学びから対話的な学びへのシフト

・今後は,「『個別最適な学び』は,『個に応じた指導』と違いはない。」という触れ込みが増える。(上記を踏まえる必要がある点で厳密には違う。ALの「今までの指導と変わりません」の時と似ている。)

・「持続可能な社会の創り手」の表現はあるものの,ESDとの関連は先行実践校のみで,SDGsはまだまだ進まない。

「令和の日本型教育」の(達成に向けた)手段について

【簡単整理】令和の日本型教育とは何か」で整理した内容を、少しだけ掘り下げます。なお,「手段」や「キーワード」は,私が勝手に解釈して整理したもので、文部科学省が「『手段』は○○で,『キーワード』は△△で~」と発信しているわけではないことを申し添えておきます。ご了承ください。

 

手段

①新学習指導要領の着実な実施

②ICTの活用

新学習指導要領の目的も,資質・能力の育成です。「令和の日本型学校教育」の目的も基本的には同一ですから,新学習指導要領の内容をしっかり取り組みましょうということです。新学習指導要領の解説は今月中に行いますが、目的達成のためのポイントは2つです。「カリキュラムマネジメントの充実」(外国語教育やプログラミング教育を含む教育課程の充実、PDCAサイクルによる改善、人的・物的リソースの活用)と「主体的・対話的で深い学び」による授業改善です。

ICTについては,同じく今月中に「情報活用能力」について扱うので,詳しくはその時に。

キーワード

①個別最適な学び

②協働的な学び

これについては別記事「「個別最適な学び」と「協働的な学び」について,現時点の要点整理と今後の予想」を起こします。4月8日公開予定です。

 

 

「令和の日本型教育」の目的と目標について

 

【簡単整理】令和の日本型教育とは何か」で整理した内容を、少しだけ掘り下げます。なお,「目的」や「目標」等は,私が勝手に解釈して整理したもので、文部科学省が「『目的』は○○で,そのための『目標』は△△で~」と発信しているわけではないことを申し添えておきます。ご了承ください。

 


目的    

一人一人の児童生徒が,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるようにすること


ここでの要所は,①「一人一人の児童生徒」と②「社会の創り手」です。

①は,step2で詳しく説明する「個別最適な学び」に係る内容です。

②は,新学習指導要領の総則でも使われた表現ですね。社会の「担い手」ではなく,「創り手」であるというところが大切です。

 


目標

①自分のよさや可能性を認識する

②あらゆる他者を価値のある存在として尊重する

③多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越える


ここでの要所は①が「個別最適な学び」,②と③が「協働的な学び」と関連していることです。言葉自体はそれほど難しくないですね。

③にある「協働」については最近再びよく見るようになりました。詳しくは5年前の記事ですが「協同と協働」や「「協働的な学び」が「対話的な学び」にシフトした理由」あたりが参考になると思います。

 

続きはpart1-②で。

【簡単整理】令和の「日本型学校教育」とは何か

3月27日(土)にあった、文部科学省が行ったオンラインシンポジウム「令和の日本型学校教育」を語る!」(リンクはYouTubeによるアーカイブ配信)については、今週中に要点を簡単にまとめて、UPする予定です。

さて、本題。「令和の日本型学校教育」について一言整理です。

 

目的    

一人一人の児童生徒が、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすること

 

目標

①自分のよさや可能性を認識する

②あらゆる他者を価値のある存在として尊重する

③多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越える

 

手段

①新学習指導要領の着実な実施

②ICTの活用

 

キーワード

①個別最適な学び

②協働的な学び

 

目立ったところだけ切り取りました。個々の言葉については、明日以降に説明していきます。