学習指導要領の目的について

資質・能力の育成が目的であることは、昨日書いた通りです。

(1) 育成を目指す資質・能力を示し、「目的」を明確にした。

 ①予測困難な時代を拓き、社会の創り手となる子供の育成

 ②学びの主体は子供だということを明確化

さて、今後研究を進める上で気を付けたほうがいいのは、「社会の創り手」という部分。「社会の担い手」という表現はこれまでも聞いてきましたが、あくまで「創り手」。子供が自ら創り出していく、というニュアンスを強く込めたかったことが見て取れます。このことは文字面に現れなくても、研究部からの発信(校内研究でのプリントや発言)や指導案の書き方、最終的には研究のまとめに至るまで、影響があることなので、最初から気にしておいたほうがいいと思います。感覚のズレは、言葉の節々にどうしても出てしまいますからね。

背景にはもちろん学びの主体は子供である、というパラダイムシフトがあるわけです。5年前は ” child center ” (子供が中心)という表現も見られました。(個人的には子供の預かり施設?みたいな響きで、最初からピンと来なかったので、少し安心しています)

子供が中心であることは、令和の日本型学校教育で、「個別最適化された指導」(「個別最適化する」のは教師?大人の望むように学ばせる?)から、「個別最適な学び」へ表現が変わったことや、変わった理由を「『個に応じた指導』を(学習指導要領の趣旨に則り)子供主体の表現に変えただけで大きな方向転換ではない」と言っているあたりに関連しますね。主体が教師から子供にというパラダイムシフトは、すごく大きな方向転換だと思ったりもしますが…。

これまでもALの時から、「授業の主体は子供」「評価は子供の姿で」としていましたが、今回の学習指導要領でまとめたよ、ということなんでしょうね。

今回の学習指導要領のポイント

 

「文部科学省は、『たし算』ばかりでとにかく新しいことばかりさせようとする。」「『働き方改革』を謳うなら『ひき算』を提示してほしい」なんて最近よく聞きますが、そもそも、新しい学習指導要領で何を足そうとしているか、ちゃんと理解している人ってどれくらいいるんでしょうか。

新しく入ってきたことを具体的に挙げるのは次回にして、まずは「(新)学習指導要領のポイント」だけ語っていきますね。だれかに聞かれたら、下の「 」の3つで答えておいて、(1)~(3)で補足。余裕があったら①、②もね。

 

今回の学習指導要領のポイントは?

(1) 育成を目指す資質・能力を示し、「目的」を明確にした。

 ①予測困難な時代を拓き、社会の創り手となる子供の育成

 ②学びの主体は子供だということを明確化

(2) 育成するために必要な「内容」を修正・追加した。

 ①各教科等でバラバラだった各教科等の目的を3つの柱(資質・能力)で整理

 ②追加内容は「プログラミング教育」とか「外国語教育」とか

(3) 育成するための「方法」を提示した。

 ①「主体的・対話的で深い学び」の実現(に向けた授業改善)

 

(1)~(3)を図で表したのがコレ。

学習指導要領改訂の方向性 よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現 各学校における「カリキュラム・マネジメント」の実現 何ができるようになるか 新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実 学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養 生きて働く知識・技能の習得 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成 何を学ぶか 新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し何を学ぶかどのように学ぶかよりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるために必要な資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現学習指導要領改訂の方向性何ができるようになるか生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目「公共(仮称)」の新設など各教科等で育む資質・能力を明確化し、目標や内容を構造的に示す学習内容の削減は行わない 高校教育については、些末な事実的知識の暗記が大学入学者選抜で問われることが課題になっており、そうした点を克服するため、重要用語の整理等を含めた高大接続改革等を進める。 どのように学ぶか 主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善 生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成 知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善

この図はよく見るんですけど、字が多すぎて全く理解しようと思えない・・・。わかっている人が見れば、よくまとまった図なんでしょうけどね。

全体的には、前例のないことに挑戦している、「挑戦的な意欲作」と言えます。そして、新しい表現(内容ではない)が多くて、インパクトもあります。ただそれが、人によって「負担」に感じるのも確か。

そのあたりをみんなで共有しつつ、具体的にどう改善していくかについて、今週はだらだら書こうと思っています。