「小・中学校ではアクティブ・ラーニングはすでに行われている」は本当か(ALの階層①)

研究大会などで,ALの話になるとよく出てくる言葉です。質疑応答の場面で,各学校の研究を担当されている先生が,授業者や研究担当者に対しての質問でよく見かけます。具体的な例で言うと「今までの授業とどこが違いますか?」という質問が端的なものです。

中教審より新指導要領へ向けての答申が出て,ALについての表記についても話題になっています。よく「扱いが軽くなった」という話を聞きますが,自分の感覚では「適正に読まれるようになった」という印象です。もともとALは「 」や( )付の言葉です。ALの言葉が文字通り一人歩きして,「アクティブ・ラーニングで(の)授業しなくてはならない」と思い込んでいる人が相当数いたように思います。そういう人からすると,「扱いが軽くなった」とか,「ALについて重視されなくなってきている」とか,「(やっと)ALブームは終わる」などと感じるのかもしれません。

さて,表題の話をしましょう。1単位時間の授業におけるALについて言えば,確かにそういう見方もあると思います。算数を例にとれば,算数的活動が十分に取り入れられている授業はALと言えます。過去の優れた実践がALであることは間違いありません。

しかし,それはあくまで単位授業での話です。それらの実践は,いわゆる「AL型授業」であると言えるだけに過ぎません。多くの先生方が感じられているとおり,そのような授業は日常的に行われるものではありません。(これを拡大解釈して「ALは時間がかかるから,一部の授業だけやって,他は今まで通りでよい」という曲解をしている人も多いです)

AL型授業は,いわばALの「点」に過ぎません。

「点」レベルの実践は,これまでにもたくさんありますし,何より研究担当の先生レベルであれば,ある程度自分なりの型を持ちながら単元の中に組み入れられていることでしょう。そういう人からすれば冒頭の「今までとどこが違うのか」という疑問は,ある意味必然とも言えるでしょう。単元の特に見方・考え方を大事にした授業において,AL型授業を行うのは,「そういった経験や意識がある程度あれば」当たり前のことなのだと思います。

【余談】一方で,ALによる授業改善を求められているのは,そういった先生たちだけではありません。研究担当の先生方は,ぜひ自分の学校の授業が,自分が思うようなALの授業で進んでいるかを見ていただきたいと思うのです。そうすればおそらく,自分の授業がいかに一般的ではないことに気づかされることと思います。

さらに言うなら,一般的な先生方にとって授業改善をしていくときに必要なものは,いわゆる過去の優れた実践(AL型授業)ではないことに気づかれると思います。そういった授業をするための要素があって,もっとわかりやすく,もっと小さな「ステップ」があるはずだと感じると思います。その話はもう少し先(ALの階層②)でしようと思います。【余談終わり】

さて,ALの研究をされている学校では,学びのストーリー性を大事にされているところが多くあります。生活科や総合的な学習の時間の研究では一般的に言われる「グランドデザイン」により,単元を俯瞰的に捉え,子供の思考に沿った単元計画を作成することで,子供がより主体的に学ぶことができるようにすることを大切にしています。

これを私はALが「線」になったものだと捉えています。

授業の評価はどうしても目の前で見た授業がどうだったか,という視点のみで語られがちです。つまり以下の視点が無いままに話されることが多いのではないでしょうか。

① それまでの学びでは,子供たちの中にどんなストーリーがあって,本時の学習の必要感が生み出されているのか。
② どんな協働的な取組を行って,対話的な学びが自然に行われてきたのか。
③ または,これまでの授業でどんな振り返りを行ってきて,その教科等の見方・考え方を深めてきているのか。

いわば本時の授業の「作り方」を,線のALの視点で捉えることが,今後の授業改善では必要なことだと思うのです。これはまだ,多くの教科等では取り入れられてない視点ではないかと感じています。


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