アクティブ・ラーニングの視点を生かした授業 共に学ぶ
東洋館出版社
校内研究の始め方として,
① 本校児童の実態(教員によるアンケート)
② 本校児童の課題(研究部の集約)
③ 目指す子供像(研究部の提案)
という風に見せるのが一般的だと思います。今だと研究主題を設定するために,アンケートの内容をそれ(AL)に寄せたものでとって,「課題」や「子供像」をどうするか考えるのが研究部のお仕事ではないでしょうか。
「子供の実態から課題を見出し,研究仮説を立てる」というのは,もっともそうな感じはしますが,子供の姿というのは捉え方次第で,それに向けた指導・支援のあり方も変わっていくという欠点(?)もあります。データの受け取り手によって,「本当にそれが課題と言えるの?」と言われてしまっては,せっかく取り組む研究もそのよさがなかなか伝わっていかないでしょう。
むしろ,「子供たちがこんな姿になったらいいな」というところから,研究仮説を立てていくというのも(潔い?)一つの方法だと思うのです。今回紹介する本の中では,ALの授業を通して目指す資質・能力を身につけた子供像について,教科の具体の姿と共に紹介されています。これは同時に「こんな姿が見られれば,ALで資質・能力が育っていると言える」という評価規準にもなります。
正直,情報の鮮度の面で見れば,それほど新しいことがたくさん載っているものではありません。それは,これまでの中教審が打ち出してきた方針と大きく違わない(というか全く同じ)からだと言えます。そういう意味で,研究のベースとして読んでおくのはいい一冊だと思います。
後半には,弘前大学教育学部附属小学校の実践も載っています。
個人的には,学習指導要領の国語科の規準を超える活動(例:1年生で「相違点」について話し合う等)が目に付いて,その分の指導をどうするかという疑問がありました。
しかし,それぞれの実践はALの視点を十分もちながら行われているもので,大変参考になるものが多くあるように思います。それぞれの授業の板書計画もあるので,非常にイメージしやすく,これらの実践を再現することも先述の点さえクリアできれば難しくないと思います。対話的な内容がしっかり記録されているのもいいですね。
そんなわけで「買い!」の一冊です。