これまでの記事で,資質・能力の育成は,単元・題材レベルでということを書いてきましたが,実際の授業作りでは,どうしたって単位授業レベルの指導案での勝負になりがちです。特に,算数・数学や道徳は「1時間勝負」の文化が根強く残っていて,「本時の目標の達成」がとても大事にされますよね。
他の教科等に比べて,算数・数学や道徳は1単位時間の完成度が,そのまま授業の良し悪しに直結しやすいと感じています。
算数・数学は学びが連続的・継続的で,単元全体のイメージよりも,その時間に学んだことがすぐに次時の課題につながることが多いためだと思います。
道徳は,そもそも年間35時間の枠の中で,内容項目的なおさえはありつつも,実質的にそれらを系統立て(学年内・学校内)て運営していくのが,実際はなかなか行われていないことが大きいと思います。
正直な話,1単位時間の授業のレベルを高めていかなくては,「系統立て」るどころではないという面もありますね。
さて,表題の話です。以前ALの研修をしていた時期に「評価」をどうするかというのが問題になりました。ここで言う評価とは子供の「学習評価」を指します。育成を目指す資質・能力が目的に含まれている新学習指導要領においては,全く問題ないのですが,以前は「AL専用の評価項目が必要では?」ということも議論されました。
その議論と同時に,学びの主体が子供という捉えにおいては,単元の学びの中で「育成を目指す資質・能力」は単元の中で継続的に・連続的にその育ちが表れるのではないかということに注目されました。つまり,「思考力・判断力・表現力等」の授業において,「知識・技能」の高まりが確認できるようなことが,今回の学習観の転換により,より多くおきるのではないかということです。
これまでの学習観に立てば,教師の「ねらい」に対して,その達成度を測ればよいのですから,基本的の本時の目標の達成は本時で見取るのが筋です。ですから,「(単位時間ではなく)長いまとまりの中で評価します」などと言おうものなら,「目標が達成されたといえない」「本時で身につかなかったことが,どうしてその後の授業で身につくのか」と言われたものです。
しかし,新指導要領では「1回1回の授業で全ての学びが実現されるものではなく,単元や題材など内容や時間のまとまりの中で」(解説 算数編p8)授業改善をしていく(主体的・対話的で深い学びを実現していく)とあります。改善された授業において,子供の学習評価をしていくことを考えれば,
単元や題材で育成を目指す「資質・能力」を教師が理解し,その育成を(特定の単位時間だけでなく),単元や題材全体で見取り,評価して指導に生かす
ということが求められていると考えます。
もちろんこれまでも,一つの授業に「指導案上に表記される評価項目は1個(or 2個)に絞って」も,それは「4つの評価項目のうち,最も色濃く出る項目を指導案上に載せる」というものが多かったと思います。(研究編に「本時の目標(&評価)」が書いてあるから・・・というのもあるとは思いますが。)
なので,これまでの「特定の評価項目だけが評価の対象になるではない」という考え方は,今回の新指導要領の「内容や時間のまとまりの中で」という感覚に近いと言える気がします。
今後は授業評価(良い授業だったかどうか)については,単元における各評価項目ごとの目標が(本時の主たる評価項目以外の項目についても),大事にされるようになるのではないでしょうか。