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「AL授業のチェック項目」は設定できるか

この記事はずっと下書きに保存していて,ずっと書けずにいたのですが,今回の学会に参加してとても参考になりそうな発表を見かけたので,改めて書き出しました。

今回,北海道教育大学釧路校の早勢裕明先生が,池田敏和先生が2002年に書かれた「算数科における授業を見る視点に関する研究」(日本数学教育学会誌)を基に,研究協力者の授業を評価したものを見ることができました。それによると,

「授業事例における成否を分ける瞬間と教師が不安を感じる場面や対応策の関連」という項目で,場面の対応策として「ベテラン教師によるインタビューによる算数科の授業を見る視点」を,21項目で挙げています。例えば
1. 教えたいことは子供から出させている
2. 何が本質かを捉える
3. 子供の反応を予想する …
などです。上にもある通り,これは算数授業を想定したものですが,項目を精査することで,他の教科等でも使えるものになりえると考えられます。チェック表に使えそうな項目がたくさんあります。

もう一つ。ALのチェックリストを作るには,一つ気を付けるべき点があります。それは

Aという活動をしているからALである。
Bという活動が不足だったからALでない。

という均一的な評価はALにはそぐわないことです。

これまでの各地方の教育委員会などの取組で,授業のチェックリスト的なものはありました。授業の評価は,いくつかの要素(項目)の達成により「良い授業」と判断されるはずのものだと思います。しかし実際は,「プリントを用いて適用問題に取り組んでいる」や「ノートの指導が適切にされている」など,項目がたくさんあって結果的に「減点法」により授業を評価することになるものが多いように思います。このやり方では,多様な学習活動によって資質・能力を育てよう,というAL型授業の評価は難しいと思います。

このようなチェック方法では,最低限の単一的な授業を作り出すことはできても,AL型授業の目指す「主体的・対話的・深い学び」を実現するのとは,別の方向に行きかねないと思います。

以上の要素を盛り込んで,今後「AL型授業チェックシート」の作成を考えています。完成はいつになるのか…。少々お待ちください。

PS. いくつかの要素をクリアしているかをチェックするシートを参観者分集めて,それを集計することで,「アクティブ度」として数値化する試みも考えています。また,2次元表(「主体的」と「深い学び」)+補助として「対話的」を盛り込んだ表を作成し,参観者の評価をプロットすることで,授業評価及び良かった点,改善点を明確にする事もやってみようと思っています。(Q-U的な感じですかね)

学会に参加してきました

ポスター発表をしてきました。内容は主にワールドカフェについて。

本来的にはALの話の一部としてWCを紹介したかったのですが,学会という事で内容的に絞らざるを得なくて(というか自分の情報収集能力の低さにより),一点突破型の主張をしてきました。

私がいる地域では3年ほど前から紹介していたこともあり,WCにはそこそこの知名度があったのですが,やはり全国区や学者先生方の間では,ほぼ知名度は無に近かったです。どうあれ周辺事項やその根底にあるものを丁寧に調べる必要があったと反省しています。

主張の中でもありましたが,「(一般的な)ワールドカフェをそのままやるのではなく,子供の必要感に合わせてカスタマイズすることが大事」ということが伝わっていたら嬉しいです。

まぁ実践系の話なので,もっと論文の書き方を勉強しなくてはいけなかったと猛省しているところです。

そのALは,いつのALのことか

「アクティブ・ラーニングの視点で授業改善を行おう」と言えば,反対する人は少ないのですが,少なからず「アクティブ・ラーニング」という言葉に反射的に悪い印象を持ってしまう人も結構いるのがわかってきたという話です。 “そのALは,いつのALのことか” の続きを読む

平成28年9月現在のAL

「アクティブ・ラーニング」を考える 教育課程研究会

平成28年度9月現在で,最もその核心をついていると思われる本がこれです。これはALを研究する上では必携本になりうる内容が詰まっているので,特におススメできます。

内容の説明はAmazonさんに譲るとして,一番の強みは前文科省初等中等教育局長をはじめ,中教審委員や視学官の先生方が,これまでのALの考え方を踏まえながら,現状とこれからについて書いてあることです。そしてそれらが,教科等ごとに語られています。

例えば算数科においても,算数・数学的活動とALのつながりについて,とても丁寧に書かれています。一つ例を挙げれば,「算数的活動は数学的活動と呼ぶことが議論されているが…」など,最近のことも示されています。

来年度の研究を見据えて,一度読んでおきたい一冊です。

アクティブラーニングの研修を受けて感じたこと

先日アクティブラーニング研修(「・」がない方)の研修に参加させていただきました。そこでは「シアターラーニング」というアクティブラーニングの「在り方」を学ぶという名目で,研修がなされていました。私なりに感じたことを整理していこうと思います。 “アクティブラーニングの研修を受けて感じたこと” の続きを読む

「協働的な学び」が上手くいっていない背景

前記事「協働的な学び」が「対話的な学び」にシフトした理由」で書いていた「協働的な学び」の問題点について,まだ書き足りていないのでその続きです。本当は,平成28年8月現在のALの文科省の認識について,推測を含めながら書こうと思っていたのですが,それはこの次にします。

現行で研究テーマを「言語活動」にしている学校は多いと思います。あるいはそれを踏まえて今は「ALの研究を進めているところ」という学校も多いでしょう。

さて,「言語活動」の研究の反省として意外と多いのは「単純な話型指導になってしまっている」ということです。つまり,発達段階に応じて,「どんな言葉で話せばいいか」ということに終始してしまい,本来は学びの手段であるはずの「話し方」の獲得が目的化し,表現の幅を狭め,型の獲得のために教師主導の指導が増え,結果的に子供の主体性を奪うという流れが多いかった,ということです。これは過去の例でいえば,「100マス計算」の時の流れと似ています。手段(簡易な計算の高速化)は,比較的容易なので研究の取組として扱われやすいものの,その目的(深い思考が必要な問題の解決のための「道具」としての計算力の獲得)まで把握していないことで形骸化してしまうというのは,よくあることです。

今回のALの例でいえば,「協働的な学び」がその例に近くありました。言語活動とも相性が良く(前記事「なぜ初等・中等教育でアクティブ・ラーニングが推奨されているのか」を参照),実際AL研究をここから始めている学校も多いことでしょう。しかし実際の多くの(「研究授業」ではない)授業では,ペア学習やグループ学習が教師主導の下で行われ,子供の「主体性」や協働的に学ぶ「よさの実感」などはあまり大事にされていないのが現状でしょう。

「知識伝達型講義を乗り越える…能動的な学習」(溝上慎一 詳しくはコチラ)であるALにおいて,「学びの中心は子供である」という考え方へのシフトは今回の最重要項目であると言えます。それでいながらこれまで「協働的な学び」の下で行われている実践は,上記のような問題点があります。

学びへの考え方をシフトするなら,下の本がおすすめです。会話形式でとても読みやすく,「対話的な学び」の具体が示されています。少し前の本なのでAL的な強調されていませんが,西川先生はその後「学び合い」の視点からALについて,たくさん本を書かれています。そちらを読む前に,一度読んでもいいと思います。

クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門<会話形式でわかる『学び合い』テクニック> (THE教師力ハンドブック)

「協働的な学び」が「対話的な学び」にシフトした理由

これまでALについて語るときのキーワードの基本を「主体的・協働的な学び」としていたのですが,最近のキーワードがちょっと変わってきているようなので,紹介しておこうと思います。 “「協働的な学び」が「対話的な学び」にシフトした理由” の続きを読む